qualiadiversity’s diary

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必読の一冊「流れを経営する」

「知識経営」の生みの親といわれる野中郁次郎氏。その新著「流れを経営する」(東洋経済)は、組織に関わるモノの必読の一冊といえる。3年前にピーター・センゲ氏が来日したときに野中氏との鼎談を聴く機会があった。その際に野中さんが「フロネシス(賢慮)」について語っていたのが非常に印象的だった。とても重要なことを言っているなと思ったが。その時はよく理解できなかった。
本書を読んで、「フロネティックリーダーシップ」についてであったかと腑に落ちた。どこを読んでも面白い一冊だが、リス研メンバーとともに語りあった印象に残った文章を抜粋してみた。
これを咀嚼し、自分にものとするにはまだもう少し時間がかかりそうだ。

・ビジネスの本質とは利益の最大化のために競合他社をしのぐことではなく、その企業に特有の卓越性を求め続けることである(はじめに)

・知識は単にデータや情報を集積したものではなく「意味のある情報」である(P6)

・知識は「関係性の中で作られる資源」(P7)

・人が「信念」を抱くとき、またそれを真であると認めると正当化するとき、それを全くの無の中でおこなうということはありえない。他人とのやりとり、これまで学んだこと、自分を取り巻く環境、こうしたものとの関係から信念は生まれ、その関係の中で正当化されていく(P7)

・われわれは知識を「個人の信念が真実へと正当化されるダイナミックな社会的プロセス」と定義する(P7)

・知識とは他社との相互作用を通じて、何が真・善・美であるかを問い続けるプロセスであり、そうした信念(主観)と正当化(客観)の相互作用にこそ知識の本質がある(P8)

・世界は「モノ」ではなく、生成消滅する「コト」すなわち「出来事」によって構成されいる(P12)

・経験することは創造することであり、創造することは経験すること(P14)

・われわれが環境によって、規定され生成される受動的な存在だということはない。逆に、われわれは環境との関係の中で自身を規定し、環境を再定義し、再生する能動的な存在なのである。プロセスの本質は未来に向けた創造的統合にあるが、その未来を描くのも、そこへ向けて統合をおこなうのも、人の意思である。われわれと世界の関係は、われわれが「どう成りたいか」による(P16)

経営学は、普遍の規則に基づく分析から形成されるのではなく、企業が直面する個別具体の問題に対処する実践の中から創発される(P19)

・うまい酒を造るためには,温度や湿度の管理といったノウハウが必要であるが、「うまい酒とはどういうものか」ということを知っていることも必要である(P26)

・知識創造とは、常に自己を革新する終わりのない変化の過程であり、暗黙知形式知、創造性対効率性の弁証法的運動といえる(P30)

・顧客のために考えるな、顧客として考えよ(P32)

・内面化はただ実践することではなく、自覚的・意識的に行われる実践である(P40)

・「ある(being)姿の延長としての未来ではなく、まず「かく成りたい(Becoming)という未来を描き、そこから現在「何をすべきか」を規定するものである(P45)

・企業の役割は現在目に見えている市場において顧客を他社から奪うのではなく、いまだ満たされていない顧客のニーズを見つけ出し、イノベーションによって彼らに新たな価値を提供すること(P47)

・場の実体は空間ではなく、そこで行われる多元的な相互作用である(P61)

・顧客の世界に「棲み込む」ことによる開発を重視する(P63)

・場は、独自の意図、目的、方向性、使命などを持った自己組織化された場所でなければならない。意図がなければ場のエネルギーは方向付けられず、カオスが場を支配することになる(P67)

・場には自律性が必要(P68)

・場には異質な知を持つ参加者が必要である。・・しかし、ただ異質な知を持ち寄るだけでは新たな知は生まれない。異なる視点と文脈を共有し、綜合する過程が必要である(P69)

・最小有効多様性を持つ場のメタファーは球体である(P70)

・場は環境と構造と行為主体が「いま・ここ」の関係性の中で交差し、相互浸透することによって生まれ発展する。同時に、場の働きや場と場の関係性が、環境や構造や行為主体の行為を形作っていく(P76)

・愛・信頼・安心感などが重要な知的資産であることは、誰しも直観的には納得できるだろう。しかし、それらを客観的指標で評価することは、現状ではほとんど困難である。これらの知識資産の把握と評価は、今後ますます重要となる課題である(P83)

・型は実践から生まれるが、単なる現場主義ではない。現場からのフィードバックを受け、絶えず型を洗練してくためには、客観的な観察と行動の修正を同時に行うというメタ認知が必要である(P86)

・フロネシス(賢慮・実践的知恵)は真・善・美の主観的感覚に基づく判断基準、あるいは人々が希求する共通善に関する価値判断に関係する(P99)

・フロネシスの6つの能力 1.善悪の判断基準を持つ能力 2.場をタイムリーに創発させる能力 3.個別の本質を洞察する能力 4.本質を表現する能力 5.本質を共通善に向かって実現する政治力 6.賢慮を育成する能力(P101)

・フロネシスとは個別具体の状況に即した決断をする能力であり、刻々と変わる状況を素早く把握し、その文脈で何が必要なのかを素早く理解し手行動することを可能にする能力である。状況を「読み」、素早く対応するためには、自分野立場からだけではなく、ときには他者の視点からも、状況を見ることも出来なければならない(P106)

・行為のただなかの熟慮(P108)

・一生懸命には「正しい理論に基づく」ことが欠くことを得ない前提条件である(P109)

・理念なき行動(技術)は凶器であり、行動(技術)なき理念は無価値である(P109)

・人間的魅力とは「人間性の矛盾を自分なりに受け入れ、綜合できること」。つまり、政治力とは、人間の相反し、矛盾する性質-善と悪、楽観と悲観、蛮性と知性、勤勉と怠惰など-を理解し、場の文脈に応じてタイミングよくそれらを直観、調整していく力なのである。このような政治力によって、組織内外を問わず知識の共有や創造を促進し、知識創造のコストを削減することが出来る(P114)

・知識創造が生ずる場とは「参加する人々が互いに心を開きあい、関係を深めていくところに現れる世界である。心を開くとは、自分へのとらわれをなくすことである。なくせば、なくすほど、場の本質に迫ることができる(P249)

・リーダーの役割とは、一番素晴らしく人をエナジャイズする、インスパイするということ(P347)

・マネジメントはリベラルアーツである。マネジメントは知識に基礎、自己についての知識、知恵、そしてリーダーシップにかかわるがゆえに幅広い教養である「リベラル」であり、実践と応用にかかわるがゆえに「アート」である。アートは人間の生き方そのものであり、価値観と不可分の関係にある。そして、知の生態系の幅を広げ、質を高め、価値観を形作るのが教養なのである(P402)

・企業経営とは、つまるところイノベーション創出であり、現在の延長線には必ずしもない。新たな未来の創造である。――未来を創るのは、共通善に向かって、矛盾に耐え、持続的な止揚をめざす知識創造プロセスである。そうしたプロセスを実現するためには「いま・ここ」の文脈で、適切な判断をタイムリーに行うフロネティック・リーダーシップが必要である(P416)