qualiadiversity’s diary

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フューチャーセンターをつくろう

「フューチャーセンター」「フューチャーセッション」に関心を持つ人が急増している気がする(少なくとも私の周りでは)。フューチャーという言葉には間違いなく人を魅了する何かがある。けれど単にそれだけではなさそうだ。

フューチャーセンター(FC)を世に広めた野村恭彦さんの著書「フューチャーセンターをつくろう」を読むと、これが社会や組織を変える大きな変革装置であることがよく理解できる。何かを変えたいという強い意志、熱い想いをもった人にとって、FCは大きな可能性を秘めた仕組みなのだ。だからこそ、多種多様なテーマでFCが立ち上がり、動き始めているのだろう。

  今年も5月31日(金)~6月8日(土)までFUTURESESSION WEEKが開催される。
  全国各地で一斉に多様なテーマで開催されるフューチャーセッション。興味のある人は是非参加してみて欲しい。何かをしたい、変えたいと思っている人には、きっとヒントが見つかる場になるはず。

「フューチャセンターをつくろう」の要約はこちら。

【フューチャーセンターとは】
・フューチャーセンター(FC)は、北欧の知的資本経営から生まれた「未来の価値(知的資本)を生み出す場(センター)」である。知的資本は、人的資本・構造的資本・関係性資本の3つからなる。FCは人が成長し、アイデアが創出され、人のつながりが生まれる場である。

・FCは、「対話のための専用空間」でもあり「人と人とのつながり」でもあり、「企業や社会の変革装置」でもある。FCは未来の不確実性に立ち向かうための装置に他ならない。

・FCで行われる活動は、私たちが「人として」社会や市場経済と向き合い、協力し合って変化を起こしていくための、本質的な対話と協調である。

・企業もコミュニティも「仲間が集まって対話をしているだけにとどまらない、開かれた関係性を次々と生み出していく場」を必要としている。

・FCの魅力は、新しい商品やサービスを生み出す企業イノベーションのワクワク感と、世の中にある問題の解決をめざした社会イノベーションのホカホカ感を同時に味わえるところにある。

・FCのもたらす最大の価値観の転換は、「企業のイノベーターが、社会問題を解決するパワーを持っている」こと。社会問題こそ、企業のイノベーション活動の中心に置かれるものになる。

・FCは、「創造的(クリエイティブ)」な発想でセクターの壁を超え、「対話(ダイアログ)」によってセクター間の新たなつながりを生み出す。

・誰もが社会イノベーションの一翼を担う力をもっていると同時に、誰もが社会イノベーションの阻害要因にもなりうる。FCの目的は、未来を自分達の力で創り出すこと。

【フューチャーセンターの思想】
・FCを立ち上げ成功に導くためには賢慮型リーダシップの6つの能力が必要。
  1.卓越した「善い」目的をつくる能力
  2.他者と文脈/コンテクストを共有して場を醸成する能力
  3.個別の本質を洞察する能力
  4.個別具体と普遍を往還/相互変換する能力
  5.その都度の状況のなかで、矛盾を止揚しつつ実現する能力
  6.賢慮を育成する能力

・FCを成功させるための6つの原則
  1.FCでは、想いを持った人にとっての「大切な問い」からすべてが始まる
     →問いの質を高めるためには、常に社会全体のことを考えて行動すること
  2.FCでは、新たな可能性を描くために、「多様な人達の智慧」が一つの場に集まる
     →合理的な人生は人脈を狭める。できるだけ多様なコミュニティに属しよう
  3.FCでは、集まった人達の関係性を大切にすることで、
    効果的に「自発性」を引き出す
     →「奇跡」を起こす上で最も重要。
    できるだけ少人数に分かれて傾聴し、関係性を深める
  4.FCでは、そこでの共通経験やアクティブな学習により、
    新たな「よりよい実践が創発」される
    →実際にやってみることで、思いもよらないアイデアが生み出される
  5.FCでは、あらゆるものを「プロトタイピング(試作)」する
    →とにかく目に見えるかたちに表現してみる
  6.FCでは、「質の高い対話」が、これからの方向性やステップ、
    効果的なアクションを明らかにする
    →質の高い対話には、「やらねばならないこと」ではなく
   「一緒にやりたいこと」を生み出す力がある

・FCディレクターは(FCD)、FCのミッション、扱う問題の領域を決める。FCDの役割はFC全体の活動を通して、組織変革や社会変革をデザインすること

・FCDは強い「想い」を持ち、他人の「想い」を引き出し、「パワフルな問い」を立てられる人でなければならない。
・FCDに必要な特性は「情熱・好奇心・共感力」それらを統合した人間的魅力。
・FCを立ち上げようと思ったら、あなた自身がFCDになることを真っ先に考えて欲しい。FCはハコモノではなく、あなた自身の世界観でつくりあげていく社会変革装置なのだ。

【FCセッションを開く】
・FCの方法論には、3つの方法論がある。
  1.対話の方法論
    相互理解・信頼の関係性を構築する、異質から気づきを得る、
    内省や思考を深める。未来のステイクホルダーとの対話が未来を創る。
  2.未来思考の方法論
    複数の未来シナオリを想定する、未来からバックキャストする
  3.デザイン思考の方法論
    体験から学ぶ、つくりながら考え学ぶ、形にしてみることで改善し続ける

・対話の場さえあれば、未来が創り出せるとは限らない。そこには強い意志と正しいプロセスが必要
・FCセッションを設計するための5つのステップ
  1.SELECT THEME(視野を広げてテーマを設定)
    ・従来の常識から離れる/過去・未来にスケールを広げ課題設定する
     /社会的なテーマに広げて課題設定する
  2.INVITE DIVERSE PEOPLE(多様性を確保して人集め)
    ・ステークホルダーに注目/専門性の違う人を選ぶ/横断的に人を選ぶ
  3.PRODUCE HOSPITALITY(非日常経験を演出)
    ・日常を持ち込まない/非日常を演出する
     (思いがけないこと、遊び、くつろげる雰囲気)
  4.FACILITATE DIALOGUE(主体性を引き出す運営)
    ・テーマへの深い共感を得る/相互に認めあう雰囲気
      /一つの答えを出すことにこだわらない
  5.FOSTER EXECUTION(参加者全員の深い気づき)
    ・実行への期待を高める/議事録で感情を含めた物語を伝える
     /過去の対話に立ち戻れる仕掛けを用意する

・FCセッション後の活動として、「対話の整理」と「フォローアップの行動」が重要。

ファシリテーターの役割】
・FCセッションの成功の鍵を握るのはファシリテーター(F)。Fはセッションの設計と運営に責任を持つ。「場を信頼し、集合的な知恵を引き出す力」を持つ
・Fは対話に「リズム」を与え、理解と解釈、発散と収束、共感と総合を繰り返す
・Fはテンションをコントロールする。「緊張感と張り」セッション中は、ヴァイオリンの弦の張りを適切に保つように、テンションに意識を向ける。大事なことは、「コミュニケーションの緊張感を下げること」と「コミットメントに対する張りを高めること」

【関係性を生む対話】
・FCセッションの4つのステージ
  ステージ1.尊敬と信頼に基づく関係性構築
  ステージ2.深い対話によるダイナミックな相互作用
  ステージ3.多様な方法論による未来思考
  ステージ4.プロトタイピングによる協調的アクション
・関係性の構築は新たな未来を創り出していく上での必要条件。Fの役割は「新しい芽がうまれてくる環境を整えること」

【FCの設計ガイドライン
・フューチャーセンターの6原則に対応した6つのガイドライン
  1.信頼感のデザイン
    ・想いをもった人の存在が不可欠。
     この問題を語るにふさわしい人だと参加者の誰もが思えれば
     セッションに対する信頼感が高まる
    ・F自身が、「この場に集まった人達には、この問題を解決する力がある」と
     信じ「必ず創発を起こす」という強い意図を持っていることが場に大きな影響を与える
  2.多様性のデザイン
    ・FCには多様であることをパワーに変えていく力を持つことが必要
    ・空間もファシリテーションも「インクルージョン(除外されてきた人々を
     包含する)」にデザインされていること。空間はできる限りユニバーサルデザインを施す。
  3.関係性のデザイン
    ・問題解決よりも人間関係を大事にしている場だということがわかるように、
     空間設計や「お迎えの仕方」を工夫する
  4.全体性のデザイン
    ・FCに来た知らない人同士が、お互いの壁を感じることなく
     全体で一つの場をつくれるようなデザインにする
  5.可視性のデザイン
    ・プロセスを含めてできるだけ可視化する。
     現れたアイデア一つひとつをしっかりつかみ取ることが大切。
  6.安心感のデザイン
    ・リラックスした雰囲気、安心して話せる雰囲気を創り出す
    ・Fの醸し出す雰囲気が重要

【開かれた専用空間をつくる】
・FCには、専用空間があった方が良いが、なければできないわけではない。どんな場所であってもう まく「場作り」を行えば、「よい場」をつくることができる。
・良い場とは何か。その場に来た人が真っ先に「ここは違う」と感じられること。まずは 美しいこ とが最大の基準。迷ったらどちらが美しいかで決めるとよい。次に大切なことは「意外性」が感じ られること。
・誰もがいつでもリーダーシップを発揮できる状態ができたら、あとはすべてを場にゆだね、楽しむこと。よい場は自然に立ち上がってくる
・FCは常に外部に開かれていなければならない。仲間うちでよい対話をして満足するだけでなく、関係性を広げていく方向に思考を巡らせる
・FCは、ただ対話をするだけの場ではなく「新しいコトを生み出す場」。新しいコトを創発するために「新しい関係者を招く」「過去ではなく未来を語る」ことに焦点を当てる

【FCによる変革】
・アクションにつながる3つの要因
  1.課題提起者が本気であること
    表層的なテーマだとしたら、何が本質的な課題かを引き出す。
    本当にやりたいこと、その情熱のありかを確認する
  2.実行力を持った参加者がいること
    セッション後に一緒に活動を進めて行ってもらいたい人を選ぶ。
    最初は前向きで意識の高い人をできるだけ選び、
    2回目以降は変わって欲しい人を巻き込んでいく。
  3.Fが強い意志をもって関わること
    場が変化のきっかけを求めているとき、Fは強烈な意思表示をする。
    主体的な人が出てきたらFのペースメーカーとしての役割は終わる。
    後は、自発的なイニシャティブに任せる

【未来のステークホルダーと出会う】
・FCの魅力は、そこが「未来のステークホルダー」と出会える場所であること
・誰を未来のステークホルダーに選ぶかは、あなたの意志。問われるのは想像力。
・未来人が集まり、未来ごっこをするのがFC。FCファシリテーターは、スティーブ・ジョブスのように現実歪曲フィールドに参加者を巻き込む(書評アルファブロガー橋本大也氏の言葉より)
・未来人とは、自らの感性と価値観を信じ、今を生きている人。未来のことを夢想している人ではない。
・新たに関係性をつくることが。自己変革の起点となる。
・最初に「未来のステークホルダーに対する意志」をもつところからすべてが始まる。


ビジョンや戦略で人を動かすのは難しいが、新しい人とのつながりは、一瞬にして人の行動を変える。その結果新たなビジネス・エコシステムが生まれる。このプロセスこそが、ソーシャル・イノベーションなのだ。

           「フューチャーセンターをつくろう」野村恭彦著 プレジデント社を要約