qualiadiversity’s diary

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女性のためのキャリアカウンセリングとは

 働く女性を支援するNPOに勤めていた1990年代後半、女性のための再就職支援から起業支援やキャリア形成支援にシフトし、女性のためのキャリアアドバイザーを養成しようといろいろ調べていた時期がある。キャリアアドバイザーやキャリアカウンセラー、コーチングなどの言葉が聴かれるようになったのもこの頃だ。しかし、書籍、資料のほとんどは男性のキャリア形成支援が中心で(男性とは書かれてはいないが明らかに男性向けだった)、ジェンダーの視点や女性のライフイベントに言及したモノは少なかった。その中で、唯一、性差や性役割に基づくキャリアカウンセリングのポイントをしっかりと記述していたのが「ライフキャリアカウンセリング?カウンセラーのための理論と技術」(ノーマン・C。ガイスバース他著;生産性出版)である。

 最近あることがきっかけで改めて読み返してみたが、やっぱり良い本だ。女性のみならず男性の性役割についても、本質的な部分がしっかり書かれていて今でも本当に役に立つ。
忘れないために防備メモをとる。印象に残ったのは次のような内容。


第4章 性という視点からとらえたキャリアカウンセリング?女性の人生の選択肢の拡大から

・男性の生き方は仕事中心であり、競争における業績と優位性が重視される
・女性の生き方は、他者との関係及び結びつきが中心
・クライエントの性的背景を理解することは、効果的なキャリアカウンセリングを行う上で非常に重要                           P72

・カンター(*ハーバード大のロザベス・モス・カンター教授)は組織や施設が女性労働者を4つの女性的役割はめ込む現象があるという。それは、母、子ども、鉄の女、性的対象。
このような役割の一つ一つによって、女性の職業能力は軽視され、職場における差別構造が助長される。P77

〇女性性特有の5つの問題 P82~
1.数学の回避
年齢が上がるにつれ、男子生徒の方が数学の成績が良くなる傾向にあるが、性による遺伝的要素が数学的能力に関与することは証明されていない。数学は女性にとって「重大なフィルター」であり、その回避は長い間キャリアの選択肢を制限してきた
2.成功の回避
女児及び女性は自分の能力を徹底的に過小評価する。女性は現在の能力のみならず、将来的な目標達成や成功に対する期待感も引くことがわかっている。過小評価の傾向は、客観的にみて女性の成績が男性より優れている場合も同様にある。
3.伝統的でない職業に対する自己効力感の低さ
男性が大勢を占める分野で、軋轢や問題に取り組んだ人物の存在(ロールモデル)は、女性達にとって大きな励みになる。実際に女性教授の指導を受けた女子大学院生達は自信とキャリア指向が強いことが報告されている。
4.人間関係の重視
男性は発達するにつれ、自己を明確にし自己に権限を与えながら独立していくのに対し、女性の場合、発達とは絶えず人間同士を結びつけるプロセスであり、それによりコミュニティを形成し維持するのである。
ほとんどの職場環境では、女性が尊重するよう教えられてきた関係維持とコミュニケーションの能力は、評価されることはなく、このような能力が金銭的な利益に繋がることもない。
5.役割葛藤
舵と職業という2つのフルタイムの仕事を抱えることは、女性労働者にとって大きな重圧となっている。

フェミニストアイデンティティ発達の5つの段階 P89~
第1段階 消極的受容
クライエントは社会に内在する性的偏見と性差別を消極的に受容し、それが正しいと考える。この段階では男性の優位性を唱える伝統的な性役割の受容が見られる
発言例:女性は職場で責任ある立場につくべきではない。女性はリーダーに向いていない。
第2段階:新事実の発見
ある出来事をきっかけに女性の抑圧の不当性を認識する。クライエントは、自分の過去の行動と認識不足に罪の意識を感じる
発言例:自分をフェミニストだと思ったことはないが、今回昇進のチャンスを逃したことをきっかけに、能力や実績に基づいて昇進が行われているのではないことに気づいた。
第3段階:とわれれ?開放
この段階の特徴は、すべての男性をネガティブに、全ての女性をポジティブにとらえるというもの。性の二分化。男性を敵対視し、女性同士で結束する。
発言例:男性は信用できない。もう見切りを付けた。もっと女性を重視する職場を探している。
第4段階:統合化
女性は男性を抑圧的グループとしてではなく、一個人として評価するようになる。田の女性達を尊重し、女性の生活に影響する内外の要因について認識する。
発言例:今まで自分の能力を過小評価していた。今まで素晴らしい上司も権力を濫用するするひどい上司もいた。このような経験で悪質な上司はすぐわかるようになった。
第5段階:積極的コミットメント
この段階に達したクライエントは、自分の運命の方向付けと有害な環境要因の改善にたいし、非常に積極的な役割を果たそうとする。
発言例:変化を起こすのは自分次第だという結論に達した。私に必要なのは、女性にも男性にも個人的にも社会的にも変化をもたらす仕事であること。

〇キャリアカウンセリングのヒント
性的偏見に満ちた考え方に挑戦するとともに、真のキャリア意思決定を実現するための情報を提供すべきである
?職業に基づく伝統的な性の役割のプラス面とマイナス面を女性に伝える
?性的偏見に基づく自己効力感を変える方法をクライエントに教える
?数学と科学の継続学習が重要出ることをクライエントに伝える
?女性の特質を評価する:関係内自己の理論をキャリアカウンセリングに統合する

女性が働く事が当たり前になり、さらに能力発揮が期待される今だからこそ、改めて社会的な性差(ジェンダー)や性役割を理解した上でのキャリアカウンセリングが重要となるのだ。