qualiadiversity’s diary

ダイバーシティ&インクルージョンな日々を楽しむヒントや情報を発信しています。

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インクルージョン・パワー 新たな視点をダイバーシティに活かそう

第6回GOLDシンポジウム参加レポート

9月19日(金)、麻布のアメリカンクラブで開催されたGOLD主催のシンポジウムに出席しました。18ヶ月毎にロサンゼルスと東京で毎回開催されるこのシンポジウムは今回で6回目。初回から毎回欠かさず参加しています。
その理由は、GOLD( Global Organization for Leadership and Diversity )代表理事の建部博子さんにあります。
18歳で単身米国に渡り、カリフォルニア第一勧業銀行取締役兼副頭取にまでなられたスゴイ方ですが、気取らず飾らず多くの人を魅了する素敵な魅力をお持ちの方。初めてお会いしたときからずっと勝手にメンターとして尊敬しています。
今回のテーマは「インクルージョン・パワー」
21世紀型リーダーのあり方を第一線で活躍する幅広い分野の日米女性・男性リーダーから学び、実践へのステップに繋げるというもの。非常に内容の濃い素晴らしいシンポジウムでした。

【チャレンジは機会、アイスクリームはまず味わうこと】
冒頭の挨拶は駐日米国大使のキャロライン・ブービエ・ケネディ氏。写真撮影は公式メディアしか許可されていませんでしたが、あちこちでフラッシュが(^_^;)。
まあ、時の人なので仕方ありませんね。間近に見るのは2度目ですがユーモアと知性にあふれたその存在感、一気に惹きつけられてしまいました。
女性経営者パネルセッションには、元世界銀行多国籍投資期間長官で現在ANA,サントリー三井物産社外取締役を務める小林いずみさんと、伊藤忠商事執行役員法務部長の茅野みつるさんが登場。ファシリテーターは、プルデンシャルファイナンシャルのチーフエシックスオフィサーの土井・ケイ・ローヤンさんです。
茅野さんが執行役員になったのは46歳の時だそうですが、現在上場企業における管理職の平均年齢は次の通り(係長39.6歳、課長45.1歳、部長50.7歳)。茅野さんの昇進がいかに異例だったかがわかります。
二人とも決してぎらぎらと昇進を狙うタイプではなく自然体ででも本気で仕事に取り組む姿勢がひしひしと伝わってきました。「チャレンジは機会でもある」と昇進打診を前向きに受け止め、与えられた役割と期待に見事に応え結果を出す二人の姿は、女性だから・男性だからでなく、心底こういう人になりたいな~と思わせるものでした。
昇進に消極的な女性達には、アイスクリームの味を知らずに嫌うのではなく、まずは食べてみましょうと勇気づけていたのが印象的でした。

ダイバーシティ経営の視点を持つトップ達】
男性の視点で紐解く「リーダーシップ、共同参画、パートナーシップ」は、男性経営者が語るダイバーシティインクルージョンです。
シスコシステムズの代表執行役社長の平野康文さんは、自分が女性メンティを持った時の経験について「どうしても自分と同じ(男性型の働き方モデル)を女性に期待してしまって最初はうまくいかなかった」と語ってくれました。その人本来の持ち味を引き出すのがメンターの役割。女性のリーダーシップ開発で気をつけるべきポイントです。
製薬会社バクスターの社長ジェラルド・リマさんは自社で推進している「Japan New Initiatives』の内容を紹介。その4つの柱は次の通りでした。
1.Natural Working Mom
 スーパーウーマン的働き方からワーキングマザーとして自然体で継続的に働き続 けられる会社に
2.From IKU Men to IKU Boss
 イクメン(育児をしながら働く男性社員)を増やし、イクボス(育児をする社員 を支援する上司)になろう
3.Flexibility for no reason
 テクノロジーや智慧の共有・協働により柔軟な働き方を創る
4.Relocation to Toranomon-Hills
 新しい働き方を実現するための新事務所 
 *4だけは正直??ですが、他の内容は納得ですね(^_^)
バクスターには特別な思い入れがあったので、社長の話はひときわ感慨深いものでした。
それは、1999年の秋のこと。
米国のダイバーシティ企業を視察した帰りの飛行機に機内誌としてフォーブスというビジネス雑誌が置いてありました。
表紙には赤ちゃんを抱く男性と「Daddy Stress」の大きな文字。
その特集の内容は、共働き世帯の増加により育児を共に担うワーキングファザーが増え、育児ストレスを抱える男性が増加。ランチを抜いて育児セミナーに参加する父親達の姿を紹介するものでした。表紙の男性は当時のバクスターの社長で、育児をしながら社長業をこなしているという紹介でした。
男性の育児ストレス! 
今でこそ「イクメン』なる言葉が広がっていますが、当時
は過労死・サービス残業が当たり前の時代。アメリカはすでにここまできているのかと衝撃を受けたのでした。
最近、家事・育児に積極的な男性が増える中で、こういうセミナーが続々と開催されていますね。日本もそういう時代になったのだなあと思った次第。
しかし、このシンポジウムに登場する男性達は、皆さん柔軟で行動力のある人ばかり。ダイバーシティインクルージョンが進むとイケテル男性も増えるという証拠のようです。
*フォーブスの記事は下記から読めます http://www.forbes.com/global/1999/0906/0217092a.html

【グローバルシチズンとして~第4の波を考える】
米国在住のダイバーシティコンサルタント K.IWATA氏とジョンソン・アンド・ジョンソン副社長兼チーフ・ダイバーシティ・オフィサーのアンソニー・カーター氏のセッションはToward the "Fourth Wave" of Business in the 21st Century
アルビン・トフラーが「第3の波」を出版し世界に衝撃を与えたのは1980年。それから30余年をすぎ、いよいよ「第4の波」がやってきたようです。
第2の波は Industrialの時代 成長や利益に価値がありダイバーシティは無視された時代です。
第3の波は、Post industrialの時代 創造や学習に価値がありダイバーシティの重要性が認識されるようになりインクルージョン(受容)が始まりました。
そして第4の波は、Technology and global well-beingの時代。
global stewardとしての行動(未来に向けていかに貢献できるか)が重要となります。
多様性はFully embraced and integrated, part of the "DNA" DNAの一部として組織に中に息づいています。
第4の波が押し寄せた時、日本企業はそれに耐えられるでしょうか。
J&Jのアンソニー氏がそれをしっかり見据えた企業戦略を力強く説明される姿が印象的でした。さすが「Our Credo」を持つ会社。
1982年のタイレノール事件を知った時もその素晴らしい対応に衝撃を受けましたが、やっぱりビジョナリーカンパニーには違うなあ、と感銘を受けました。
まだ知らなかった「第4の波」ダイバーシティとの関連で考えると非常に面白い内容でした。
http://www.amazon.com/The-Fourth-Wave-Business-Century/dp/1576750027

ダイバーシティネットワークの重要性 ERGsを創る】
「先進企業のD&Iへの取り組みと効果」では、MUFGユニオン銀行ダイバーシティインクルージョン副社長のジャクソン・ティーサ氏とMGMリゾーツインターナショナル上級副社長ジェームス・A・フィリス氏が、自社事例を紹介し、グループで「Employee Resource Groups(ERGs)」について、自社での展開をディスカッッションするというもの。
ダイバーシティを推進する上で、当事者同志のコミュニティを創るのは米国では一般的に行われていることだ。当事者が主体的に自らの問題を考える上でも効果があるし、マイノリティの視点を商品開発やマーケティング、プロセス改善に組み込むことで様々なメリットが得られます。

しかし、日本人同士の議論はなかなか進みませんでした。その大きな要因は,ERGsのメリットがわからないと言う前に、前提となる当事者同士のコミュニティをつくることにまず大きな壁があるからです。
喫緊の課題である女性活躍推進でさえ、女性同士のネットワーキングやコミュニティづくりの難しさを語る担当者は少なくありません。組織化する、ネットワークを創るためには、当事者意識や問題を共有し合う環境作りが不可欠だが、組織の中に点として存在しているため,お互いがその存在を認識しにくかったり、分断されて対立していたり、少数であるが故の恩恵を被っている人、あるいはある属性でカテゴリーされることに違和感を持つ人も多いのです。外国人、障害者もそうだし、LGBT性的少数者)の社員にいたっては、自分がLGBTであるということを口にすらできない現状があります。

 そのような中で、ネットワークやコミュティをつくり、その力を活かそうという取り組みは、随分遠い将来の話に聞こえかもしれません。しかし、私自身はダイバーシティ推進をサポートする中で、ERGsの重要性や必要性を痛感しており、なんとかそのような場を組織の中に創れないかと考えた時でもあったので、非常にタイムリーなテーマでもありました。

ERGsを組織にどのように導入し、その効果をどう知らしめるか、考えるよいきっかけとなったセッションでした。