qualiadiversity’s diary

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夢を駆ける社会起業家たち

 働く女性を支援するNPOで10年ほど働いていました。最初はボランティアとして、その後は専従職員として、そして理事として。まだ、NPOという言葉すらなかった時代。
事業型NPOであったその組織の専従となるとき、言われた言葉があります。「自分の給料は自分で稼いでね。」そうか、給料って毎月振り込まれるものじゃなくて、自分で稼ぐものなんだ。そんな当たり前のことを教えてもらったのもこのNPOでした。(それが3人分も4人分を稼がなくちゃいけないんだと気付いたのは後になってのことですが(笑))
私達のビジョンは「すべての女性が当たり前に仕事をし、能力を発揮できる社会を創ること」でした。女性が働き続ける困難さは今でも解消されたとは言いがたいのが現実。ましてや20年前の社会は、ようやく均等法ができたばかりで問題は山積みでした。
その中で、本当にいろいろなことを学びました。
再就職をめざす主婦や起業したい女性のための講座をしたり、パート労働や派遣労働の問題解決のための活動をしたりしながら、毎年海外視察に出かけ、国際シンポジウムを開催し、結構活動内容は活発で多くの方からご支援をいただきながらその活動の幅を徐々に広げていきました。「自分達のできることを出来る範囲で」そんなNPOも多いと思いますが、
できることではなく、やりたいこと。それを達成するためにどうすればよいか、常にそれを考えて動こうよ。そんな雰囲気のあるNPOでした。
95年の北京で開かれた「国連世界女性会議」に参加したことをきっかけに開始した、海外視察ツアーは、とても刺激的なものでした。その中で、今の仕事につながるダイバーシティやワーク・ライフ・バランスを知ったのです。
世界の女性たちと交流する中で感じたことは、女性の抱える問題はそのレベルや質は違えど本質的には同じであること、行動することの重要性、どうせ考えるなら大きく考えようというビジョンの大切さ、そして、仲間を増やす・ネットワークが社会を変えるという事実。
 特に印象に残っているのは、2002年のシンポジウムにお呼びしたバングラディシュ・グラミン銀行総裁のムハマド・ユヌスさんの言葉です。(ユヌスさんとグラミン銀行は2006年ノーベル平和章を受賞されました)
なぜ、女性にお金を貸すのかという銀行の幹部に対して彼はこういったそうです。
「男性ではなく、女性にお金を貸すことに価値がある。女性はお金を自分のためだけではなく、子どもや地域を変えるために使うのだから。女性の自立が社会を変えるのです」
ユヌスさんの力強い言葉は私に大きな勇気を与えてくれました。暖かい笑顔と包み込むような優しさ、そして強いしなやかな意志。その時はまだ、「社会起業家」という言葉を知りませんでしたが、彼こそが世界を変えることのできる一人だと強く感動したことを今でも鮮明に覚えています。
私の原動力となっているのはこのような強い意志と理念をもって着実に行動し変化を生出している人たちの姿です。
今、「社会起業家」という言葉が知られるようになりました。理念や使命感はあるのに、資金力やマネジメント力に乏しく、事業の継続に苦労しているNPOも沢山ある中で、社会的な問題を取り扱いながらも、持続可能な仕組みを作り、社会に影響力を与えていく組織として発展している。というのは本当にすばらしいことです。
私もその一人になれればと、気持ちを新たにがんばろうと思っています。 

社会起業家に関する本は最近相次いで出版されています。
関心があるのなら、以下のような本を読んでみてはいかがでしょう。

「グラミンフォンという奇跡」(ニコラス・P・サリバン著 英治出版
ムハマド・ユヌス自伝」ムハマド・ユヌス著 早川書房
マイクロソフトでは出会えなかった天職」(ジョン・ウッド著 ランダムハウス講談社
「『社会を変える』を仕事にする」(駒崎弘樹著 英治出版
未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家( シルヴァン・ダニエル、マチュール・ルルー著 日経BP社)
世界を変える人たち℃ミ会起業家たちの勇気とアイデアの力 (デービッド・ボーンスタイン著 ダイヤモンド社)