qualiadiversity’s diary

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ワークライフバランスは優秀な人だけのものか

 先日、富士通総研の渥美由喜さんとお会いしました。http://jp.fujitsu.com/group/fri/economic/people/atsumi.html
渥美さんは、人口問題やワークライフバランス(WLB)の分野で精力的に提言をされている、今話題の若手研究者です。彼の「少子化時代の最終処方箋」(島田晴雄氏との共著 ダイヤモンド社2007年)は、今まで私が読んだ少子化関連の文献の中では一番よくまとまっていて読みやすい本でした。豊富なフィールドワークとデータに裏打ちされ、なにより渥美さん自身の深い想いが伝わってくる名著です。一度お会いしたいと思っていたところ、ようやくお目にかかる機会をいただきました。ともに同じ問題意識を持っているせいか、初対面とは思えないくらい話が弾み時間の立つのを忘れて話し込んでしまいました。実際に国内外の多数の企業(特に中小企業)に取材をされているご経験から、中小企業のWLBには特に造詣が深く示唆に富んだ話をお聞きすることが出来ました。

 また、WLBを推進する上での課題についていろいろ議論したのですが、経営者層に理解がないということと合わせて、一般層にもWLBを批判する人たちがいるということを伺い、なるほどと思ったのです。私自身も時折そのような質問を受けることがあります。曰く「企業が推進しているWLBは、結局優秀な社員のためのものであって、一般社員や仕事ができないと評価された社員は切り捨てられるか、ますます厳しい働き方を要求されるのでは?」というもの。現在のような効率化最優先、成果・利益を出すことが良しとされる仕事の進め方そのものに批判的な人たちにとって、企業側から発信するWLBの考え方そのものがなじまないようです。

この問について現時点で明確な答えはもっていません。けれど、少なくともこれまでの男性(家長)中心の福利厚生的な施策に限界がきていることは明白であり、働く人の価値観の多様化やニーズの変化に対応した新たな施策が求められていることは疑いようがありません。時代の変化への対応策として急浮上したのがWLBです。ものごとはすべてそれ一つだけで成り立っているわけではなく、相互に依存したり関係しながら複雑に絡み合っています。このような問いかけを含めて私達一人ひとりが当事者意識をもって考えていくことが大切なのでしょう。

渥美さんとの出会いで、さらに深くWLBについて学ぶことができそうで、とても楽しみになりました。いつか夜通し話してみたい。そう思わせてくれた素敵な方でした。